明朝に伝わる有名な予言書『焼餅歌』の著者は、明の太祖時代の国師である劉基（別名：劉伯温）である。劉基は数理に精通しており、民間では神仙が下界に降りて太祖を補佐し、その大業を成し遂げたと伝えられている。民間伝承や文学作品では、彼は常に神機妙算を弄し、未来を予知し、古今を洞察するばかりか、風雨を呼び、神通力が非常に広大で、「五百年先を知り、五百年後を知る」といわれる、まるで神仙のような人物として描かれている。
劉基の父は劉爚といい、伝説によれば、その両親は心が非常に優しかったという。ある日、白鶴仙師が頭にできものができた乞食に化身して家に乞いに来たが、彼らは彼を嫌がらず、食事を与えるだけでなく、山に登って薬草を採り、彼の頭のできものと膿を治してやった。白鶴仙師は彼らの親切に感謝し、家裏の五峰山の麓に先祖の遺骨を埋めれば、将来必ず将相の才が現れると告げた。仙人の助けを借りて、劉爚は先祖の遺骨を山麓に埋めた。三年後、劉爚の妻が劉基を産んだ。
生まれたばかりの劉基は声を出さず、まるで唖のようだった。劉爚夫妻が悩んでいた時、白鶴仙師が再び現れた。彼は劉爚に「この子は眉目清秀で、天倉が満ち、地庫が円満であり、将来必ず王侯将相になれる」と言い、子供の喉を触り、胸を叩くと、劉基はすぐに声を出して叫び始めた。白鶴仙師は直ちに祥雲に乗って飛び去った。
幼少期の劉基は非常に聡明で、一度見たら忘れないという能力を持ち、本を数回読むだけで暗記できたため、教師から大いに賞賛された。
劉基は二十二歳で進士に及第したが、正直で清廉潔白な性格のため、後に監察御史の失職を暴露したことで排斥され、故郷に帰って隠棲した。隠棲中、隠士や仙道を訪ね歩き、伝説によれば仙人・黄石公にも出会った。こうして劉基は最終的に未来を予知し、古今を洞察する能力を獲得した。
劉基が仙人・黄石公に出会ったことについては、次のような伝説が伝えられている。劉基が白猿洞から文字のない天書を得たある日の早朝、彼は本を一冊持ち、山の石門洞の滝の左側数十丈の崖下で読書していた。突然、大きな音がして、崖がゆっくりと割れて開いた。劉基が歩いていると、石室にたどり着いた。石室の後壁中央は玉のように真っ白で、壁には二人の神仙が向かい合って立ち、四本の手で金の牌を共に持っている。金の牌には「卯金刀、石を執って叩け」と書かれていた。劉基は超人的な才能で自然にその意味を悟り、すぐに大きな石を拾って壁を叩き続けた。しばらくすると、壁が自ら開き、石の箱が現れた。箱の中には四巻の兵書が収められていた。
劉基は非常に喜び、四巻の兵書を持って振り返って歩き出した。外に出ると、崖は元通りに閉じた。
劉基が住まいに戻り、四巻の兵書を取り出して左から右へと見ても、その奥義がわからなかった。月が空高く昇った頃、劉基は文字のない天書を開くと、「人外に人あり」という四文字が映し出された。劉基は、これは自分に高人を探せという意味だと理解した。そこで彼は名山や古刹を遍歴し、ついに雲を突く山の頂上にて、仙風道骨の道士に出会った。道士は劉基に二寸ほどの厚さの本を渡し、「明日までにこれを暗記できたら、お前に道を示そう」と言った。
聡明な劉基は真夜中までには、二寸ほどの厚さの本をすべて暗記してしまった。道士は感嘆し、「本当に天才だ！」と称賛し、手近の石室を開けて劉基を中へ導いた。劉基は室内に様々な本が並んでいるのを見て、異常に興奮した。そこで道士は石室の書物と、劉基が持ってきた四巻の天書を併せて解説した。道士の細心の指導を経て、劉基はついに四巻の兵書と石室の書物の要旨を理解した。下山する前に、道士は劉基に、自分がかつて漢の張良に兵書を授けた九江の黄石公であると明かした。
元朝末年、群雄が蜂起した。朱元璋が挙兵すると、劉基は天意に従い、隠れ家を出て彼に仕え、最終的に朱元璋を助けて帝王の業を成し遂げた。
劉基は予知能力に優れていた。伝説によれば、朱元璋が呉王だった頃、江南地方で大干ばつが起きた。当時、劉基は天文を管轄しており、朱元璋は彼に干ばつの原因と、天に雨を降らせる方法を尋ねた。劉基は「天が雨を降らせないのは、牢獄に冤罪で捕らえられた人がいるからです」と答えた。朱元璋は劉基の言葉を聞き、彼に牢獄の囚人を調べさせた。劉基が調べると、確かに多くの冤罪事件があった。彼は朱元璋に報告し、冤罪を覆して誤って捕らえられた人々を解放した。果たして数日後、烏雲が空を覆い、その後、たっぷりと雨が降った。
また別の話では、明の太祖が内殿で焼餅を食べていた。一口食べたところ、内監が急に国師の劉基が来たと報告した。太祖は焼餅を椀で隠し、劉基を内殿に呼び入れた。礼を終えた後、太祖は「先生は数理に精通している。椀の中の物が何かわかるか？」と尋ねた。劉基は指を折って計算し、「半ばは日、半ばは月のようで、金龍に一口かじられた形、これは食べ物です」と答えた。椀を開けると、確かに彼の言う通りだった。
洪武四年（1371年）、劉基は引退して故郷に帰った（太祖の許可による）。劉基は悪を憎んでいたため、いくつかの奸悪な人物を敵に回した。胡惟庸は明初の筆頭の奸臣で、劉基や大将の徐達らは太祖に彼の任用を勧めなかった。そのため胡惟庸は後に人を送り、劉基が王気のある墓地を自分用に選び、後世の栄華を狙っていると噂を流した。朱元璋は勤勉な君主ではあったが、度量は唐の太宗に及ばなかった。そこで明の太祖は劉基の俸禄を剥奪した。劉基は誣告され、都へ赴いて罪を詫びざるを得なかったが、太祖はそれほど責めず、後に人を送って劉基を故郷へ送り返した。当時劉基は病にかかっており、胡惟庸が人を送って劉基の薬に毒を盛ったという。故郷に帰った後、劉基は息子に言った。「今、朝廷は徳政を修め、刑法を減らすべきだが、残念ながら胡惟庸が権力を握っているので、このような話は無駄だ。将来胡惟庸が滅びた後、太祖は私を思い出すだろう。お前は私の思いを皇上に奏上しなさい。」また劉基は「もし私の予言が外れれば、それが天下の人々の福である」とも言った。一か月後、劉基は65歳で亡くなった。その後、胡惟庸は宰相となり、多くの悪事を働いた。数年後、彼の逆謀が露見し、処刑された。この事実は、再び劉基の予言の正確さを証明した。