「両袖清風:正気を胸に、身を清く保つ」
【出典】(元代)魏初『楊季海を送る』の詩。
【意味】袖:衣の袖。両袖の中には清風(きよかぜ)以外、何一つない。もとは風を受けて颯爽と立つ人の姿を表し、後に何も持たぬほど貧しいことを指す。官吏が清廉であることを喩える。
【歴史典故】
于謙(う けん)、字は廷益(ていえき)、明朝の名臣。都に転任される前までは、ずっと地方官を務めていた。彼は清廉な官吏であり、部下の官僚たちにも極めて厳しい基準で要求し、賄賂や横領を断固として禁止した。何より、自身が率先して実践した。
正統年間、宦官の王振(おう しん)が権力を独占し、威勢をふるい、私利私欲のために権力を悪用し、あざとく権力を売買して賄賂を受け取っていた。朝廷の会議のたびに、各地の官僚たちは王振をなだめるために、多くが宝石や銀を献上した。しかし于謙は、都に上って奏上するたびに、決して何の贈り物も持参しなかった。同僚が彼に勧めた。「あなたは金銀財宝を献上したり権力者に取り入ったりはしないまでも、線香やきのこ、手拭いといった名産品を少しでも持って、人情を交わすべきです。そうでないと、他人があなたに対して悪い印象を抱き、厄介なことになるかもしれませんよ。」于謙は洒脱に笑い、自分の両袖をふるいながら、ユーモアを交えて言った。「風だけですよ!私は国と民のために官を務めるのであって、特定の誰かのためではありません。私が清廉に官を務め、誠実に職務を果たせば、他人に何を言われようと心配する必要はありません。」
このことから、彼は志を明かすために『入京』という詩を詠んだ。「絹の手拭い、きのこ、線香、もとは民のためのもの、逆に災いとなる。両袖に清風をたたえて天子に謁見し、市井の人の批評を免れる。」絹の手拭い、きのこ、線香はいずれも彼が務めていた地域の特産品であった。于謙はこの詩の中で、こうした品々はもともと人民が使うためにあるものだが、官吏が強制的に徴発・収奪するため、かえって人民の災いとなっていると述べた。そして詩の中で自分の態度を明らかにした。「都には何も持たず、ただ両袖に清風をたたえて天子に参上するのだ。」
【成長への教訓】
「一身正気、両袖清風」—これは于謙に対する最もふさわしい評価である。これは洒脱さであると同時に、節操でもある。古来より官場はまるで大きな染め釜のようで、その中で身を清く保つことだけでも極めて難しい。自らの清廉を守るだけでなく、一人の力で官場という濁った水を澄ますことは、さらに難易度が高い。だからこそ、于謙は清廉の模範として、後世に敬慕されている。私たち青少年は、今すぐ于謙を手本として、美を尊ぶ心で自らを厳しく律すべきである。「慎独(しんどく)」を実践し、清廉を一種の境地、修養、自己規制と捉えるべきだ。将来、歴史に名を残せなくとも、自らの良心に恥じない人生を送るべきである。
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