【出典】(宋代)范成大『大雪送炭与芥隐』の詩。
【意味】炭:木炭。寒くて雪の降る日に、人へ木炭を届けて暖を取らせること。他人が極めて困難で危急の時に、物質的あるいは精神的な助けを与えることのたとえ。
【歴史典故】
宋の太宗が即位して以来、創業の困難をよく知っていたため、生活は非常に質素で、宮殿内での金銀の装飾使用さえ禁止していた。また、民の苦労をよく理解し、常に民の安寧と国家の安定を心にかけていた。
ある冬、天候はことさら厳しく、鵝毛のような大雪が絶え間なく降り続いた。太宗は屋内にいたが、狐の皮の外套を羽織っていてもなお全身が冷えるほどで、宮外は言うまでもなく極寒の状態だった。太宗は暖をとるための火鉢を持ちこませ、温かい酒を供させた。彼は火にあたりながら酒を味わっていたが、ふと中庭の枯れ枝が寒風に吹かれて地面に落ちるのを見た。その光景に心を打たれ、彼は思った。「これほど寒い天候では、汴梁(べんりょう)城の民の中にも薪や米が足りない者が多くいるだろう。彼らはいったいどうやってこの冬を過ごすのだろうか?」
そのように考えた太宗は、すぐに府尹(ふいん)を宮中に呼び寄せ、こう言った。「今このように寒さ厳しい中、城内で衣食が足りない民たちがどう耐えられるだろうか?すぐさま衣料と食糧、そして木炭を持って城内を巡り、冬を越せない人々を助け、彼らの切実な困窮を解いてくれ。」
府尹は命を受け、役人たちを率いて衣食と木炭を用意し、困窮している家々に十分な物資を残して回った。援助を受けた民たちは心から感謝し、「雪中送炭」という美談が後世に伝えられた。