小さなプリンセス・レイナが病にかかりました。宮廷の医者たちも手をこまねくばかりでした。王が娘に何が欲しいか尋ねると、レイナは「空の月が欲しい」と言いました。王はすぐに最高顧問官チャンバレンを呼び出し、月を空から取ってくるように命じました。
チャンバレンはポケットから紙切れを取り出し、ちらっと見てから言いました。「象牙、青い子犬、金でできた昆虫、巨人や小人だって手に入れられますけど……。」
王は非常に不機嫌になり、手を振って言いました。「青い子犬なんて要らない!今すぐ月を持って来い!」
チャンバレンは困った顔をして手を広げ、言いました。「月は熱い銅でできていて、地上から6000キロ離れており、プリンセスの部屋よりも大きいのです。私には全く無理です。」
王は激怒し、チャンバレンを追い出しました。その後、王は宮廷の数学者を呼びました。この数学者の巨匠は頭頂部がはげており、耳の後ろにいつも鉛筆を挟んでいました。彼は王に40年間仕え、多くの難問を解決してきた人物でした。しかし今回は、王の要求を聞くとすぐに断り、こう言いました。「月は国全体と同じくらいの大きさで、巨大な釘で空に固定されています。取り下ろす方法など私には分かりません。」王は非常に失望し、手を振って数学者を帰らせました。
次に呼ばれたのは宮廷の道化師でした。彼は滑稽な服装をしており、全身に一連の鈴をぶら下げていました。彼は跳ねながら、鈴を鳴らして王の前に駆け寄り、「陛下、ご命令は?」と尋ねました。王は再び事情を説明しました。道化師は長い間考え込んだ後、ゆっくりと言いました。「陛下、あなたの大臣たちは皆、先見の明のある知者ですが、月が一体何であるかについては、皆の意見が異なります。レイナ・プリンセスに、彼女が月を何だと思っているか聞いてみるのはどうでしょうか?」王は同意しました。
道化師は急いでレイナ・プリンセスに会いに行きました。小さなプリンセスはベッドに横たわり、元気なく言いました。「月は私の爪よりも少し小さいの。指を目の前にかざすと、月を隠せるから。月は木と同じくらいの高さよ。窓の外の木の枝に月が止まっているのをよく見るから。」
道化師はさらに、月は何でできているか尋ねました。プリンセスは言いました。「金だと思うわ。」
道化師はすぐに職人に金で小さな月を作らせ、プリンセスに贈りました。小さなプリンセスは大喜びし、病も治りました。翌日にはベッドから起き上がり、庭で遊び始めました。
しかし夕暮れが近づくと、王は再び心配になり、思いました。「娘が空にまた月が昇るのを見たら、また騒ぎ出すだろう。」彼はすぐに最高顧問官と数学者を呼び、対策を相談しました。
最高顧問官が言いました。「プリンセスにサングラスをかけるのはどうでしょう?サングラスをかければ月は見えませんよ。」
王は同意せず、「プリンセスがサングラスをかけると、歩くときに転ぶだろう」と言いました。
数学者は部屋の中を歩き回り、うつむいて考え込んでいました。突然、彼は足を止め、「方法がわかりました、陛下!花火を打ち上げましょう!花火と火花で夜を昼のように明るくすれば、月は見えなくなるでしょう?」王は首を振り、「花火の音が大きすぎて、間違いなくプリンセスの眠りを妨げるだろう」と言いました。
このとき、月はすでに木の梢まで昇っていました。王は仕方なく、再び道化師に相談に行きました。
道化師は今度は深く考えることもなく、自信満々に言いました。「陛下、やはりレイナ・プリンセスに聞いてみましょう。」
道化師が小さなプリンセスの寝室に入ったとき、彼女は静かにベッドに横たわっていましたが、まだ眠っていませんでした。道化師がプリンセスに尋ねました。「月がどうして空にありながら、あなたの首にもかかっているの?」レイナ・プリンセスは笑って言いました。「あなた、本当に馬鹿ね。何が不思議なの?私が歯を一本失ったら、新しい歯が生えてくるでしょう?花を一本摘んでも、新しい花が咲くでしょう?昼の後は夜で、夜の後はまた昼。月も同じことよ。何事もそうなの。」
小さなプリンセスの声は次第に小さくなり、ゆっくりと目を閉じ、顔には甘い微笑みが浮かびました。
道化師はプリンセスに毛布をかけてやり、そっと部屋を出て行きました。