友人がある企業の人事マネージャーを務めていて、ある日訪ねて行ったところ、ちょうど新卒の大学生たちの面接を行っていた。興味本位で横に座って少し聞いてみたが、非常に衝撃を受けた。二十数名の若々しく、生き生きとした学生たちは、それぞれ自己紹介を終えると、皆自分が応募した職種への情熱を語った。当時募集していたのはマーケティングおよび営業の職だったが、これらの学生の半分以上はその専門ではない。中国語文学や外国語を専攻した者、さらには生物学を専攻した者さえ二人いた。
私は彼らに聞いた。「なぜ専門外の職種を志望するのですか？」彼等は「今の時代、就職は難しい。誰が専門と一致しているかどうかなんて気にしていますか」と答えた。さらに「では、マーケティングや営業の知識についてどのくらい知っていますか？」と尋ねると、「ほとんど知りません。働きながら少しずつ学んでいきます」という答えだった。そこで私は言った。「ある程度のことは大学時代に学んでおくべきです。例えば専門知識などは、社会人になってから全く新しい分野に触れ、働きながら学ぼうとしても、それは非常に難しいことです。第一に時間的余裕がない。第二にそれだけのエネルギーを持ち続けることはできない。第三に、会社は学校ではありません。無料で学ばせてくれる上に給料まで払ってくれるわけがないのです。」
今、多くの新卒者はこうした状況だ。競争が激しく、心の不安も大きいことから、自分の専門背景を無視して、専門外の職種へとむやみに飛び込んでいく。しかし、求職活動を始める前に、少なくとも二つのことを理解しておくべきである。一つ目は「自分がどんな仕事を探しているのか」、二つ目は「本当にその仕事に情熱を持てるか」である。
まず一つ目の点について説明しよう。この二十数人の学生たちはマーケティング・営業職を競っているが、その職に必要な素質を正しく理解していない。ある人にとっては、営業とは大口顧客からの電話を待って、年に数件の契約を結び、自社の製品がトラックで運ばれていく様子を見るだけのことだと考えている。だが、私は毎日顧客の元を走り回り、商談を行い、長距離バスに乗って移動する人物を見たことがある。彼は営業に対して深い実感を持っている。出張での営業活動は全国を無料旅行しているわけではなく、極度のプレッシャーを背負っているのだ。専門外の職を目指す学生たちが、自分の専門を捨てて新たな分野で競争する際には、自分が何を申請しているのかをしっかり把握しなければならない。応募する前に、その職業についてよく調べ、自分に合っているか、務まるか、情熱を持てるかを確認すべきだ。そうでなければ、このリスクを冒さない方がよい。
次に二つ目の点について話そう。誰もが良い職場環境を求め、世界500強企業に入りたいと願い、名誉や給与、福利厚生などを望んでいる。確かにこれらは非常に魅力的だ。しかし、自分自身に「その仕事が好きか？」「本当に情熱を持てるか？」「そこに情熱があるか？」と問いかける人はほとんどいない。営業担当者であれば、製品の効能、ターゲット層、広告キャラクター、メリット・デメリットなどをすべて熟知しているべきだ。情熱とは何か？情熱とは、どんな代償を払ってでも理解したいと思うこと。体面を捨て、あらゆる手段を使ってでも手に入れようとする気持ち。その会社の広告を見ただけで、まるで自分の家が経営しているかのようにわくわくすることだ。何かの仕事を始める前に、必ず自分に問うべきだ。本当にそれを愛しているか？そうでなければ、働くことは苦痛そのものになるだろう。給料のために苦しむ日々は、あなたの人生にとって何の助けにもならない。
イケア（IKEA）の家具は有名で、毎年新入社員を採用している。ある応募者がイケアの人事担当者に送った履歴書の末尾にはこう書かれていた。「ネット上で広く話題になっているイケアのモデルルームの写真を見るたび、私の心は本心から高揚します。自らの手と努力で作り上げられた美しい空間は、私に大きな幸せを与えてくれます。私は切実にイケアの一員になりたいと願っています。ナットを締めたり、箱を運んだりする地道な作業から始め、愛と温かさに満ちたイケアの夢をしっかりと育てていきたいのです。すべてのお客様に最高の住居サービスを心を込めて提供し、より多くの人々とイケアの製品、そしてイケアがもたらす洗練された生活を共有することが、私の最大の夢であり幸福です。」このような人物を前にして、どの企業が断れるだろうか。
仕事は妥協してはいけない。どれほど不安を感じていようと、これから直面する仕事に関しては、自分の心が何を愛し、何を望んでいるかをじっくりと考えるべきだ。もしあなたが本当にその仕事に情熱を持てるなら、ぜひ挑戦すべきだ。時間や労力を惜しまないでほしい。地面を一回掘っただけでは、穴が一つできるだけだ。深く深く掘り進まなければ井戸にはならず、水も湧かない。歳月の風が過ぎ去れば、ただの穴は平らな土地に戻り、何も残らない。しかし井戸は永久の跡を残し、情熱に満ちて前進するあなたの人生に深く刻まれ、一生を左右するだろう。