デール・カーネギーは多くの仕事を経験したが、どれも目立った成果を上げることはできなかった。自動車会社でセールスマンとして働いていた時も、彼の情熱は一向にわいてこなかった。彼は車を売る際、性能や価格、利点などをまるで暗記した通りに機械的に述べるだけだった。ある日、老人が車を見に来た。カーネギーはまたいつもの「セールストーク」を暗唱した。老人はそれを聞いて言った。「若者よ、これではどうやってお客さんを惹きつけることができる?」
老人の言葉にカーネギーは衝撃を受け、老人と話し始めた。カーネギーは老人にこう打ち明けた。「実は私も夢があります。私は作家になりたいのです。その分野での才能があるからですが、どうしても決心がつきません。」
老人は言った。「なぜやらないんだね?書き物だってお金になるよ。」老人は続けて何人かの作家の名前を挙げ、100万部以上売れた本も何冊か紹介した。
「でもおじいさん、私は今の仕事を辞めるのが怖いんです。うまくやれてはいませんが、この仕事なら安定してお金を稼いで暮らしていけますから。」カーネギーはそう説明した。
「それならば、なぜ自分の才能を平凡な生活に合わせようとするのかね?君の才能を発揮できる仕事に就くべきだ。確かにリスクはあるだろうが、本当にその能力を持っているのなら、どうして成功しないことがあろうか?せめて一度は試すべきだ。そうでなければ一生後悔することになるだろう。」老人は言った。
老人の言葉にカーネギーは目からうろこが落ちた。そうだ、新しい事業を始めるために仕事を辞めるのはリスクがあるかもしれない。だが、もし本当に自分に才能があるのなら、好きでもない仕事を続けるよりもずっと成功できるはずだ。ましてや、執筆は実際に大きな収入を得ることも可能なのだ。その後、カーネギーは独自の洞察力とオープンな指導方法で講義を行い、成人教育の方法を改革した。ますます多くの人が彼の講義を聞き、彼の本を買うようになり、カーネギーの才能は十分に発揮されたのである。
私たちの多くは、才能を発揮できず平凡な人生を送ってきたと嘆くことがある。しかし実際には、それはカーネギーのような勇気や決断力が足りないからなのである。私たちはいつも簡単でリスクのない生活を好むが、それが人の才能を殺してしまう鋭い刃となることが多い。独立して事業を起こすことは確かにリスクを伴う。だが、自分の才能を平凡な生活に妥協させることこそが、最大のリスクかもしれない。才能を発揮できない仕事であっても生活は安定するかもしれないが、才能を存分に発揮できる仕事に就ければ、間違いなくもっと良くなるはずだ。そうではないだろうか?