東漢の時代、班超は兄の班固を助けて『漢書』の編纂に従事していた。しかし彼は、男たる者の志は筆と紙に限られるべきではないと考え、文を捨て武に就き、匈奴との戦いに参加した。その不屈で決断力のある性格が、彼を戦場で幾度も功績を挙げさせた。その後、東漢王朝は西域諸国と連携して匈奴の侵入に共同で対抗するため、班超を使者として西域へ派遣した。
班超は漢の節杖を手に、36人からなる使節団を率いて出発した。彼らが最初に到着したのは鄯善国であった。班超は鄯善王に謁見し、こう言った。「尊き国王陛下、漢の皇帝は私をここへ遣わし、貴国と連携して共に匈奴に対抗することを望んでおります。我々は匈奴の侵入による苦しみを多く経験してきました。ですから、手を取り合って共通の敵に立ち向かい、匈奴が再び横暴に振る舞えないようにすべきです!」鄯善王はもともと漢が国力が強く、人口も多く、決して侮ることのできない大国であることを知っていた。今また、漢の使者が威厳と堂々とした態度を備え、まさに大国の風格を体現しているのを見て、やはり名実ともにその通りだと感心し、連続してうなずきながら言った。「まったくその通りです。どうかまずは我が国に数日滞在ください。匈奴との共同抵抗の件は、二日後に改めて具体的に協議いたしましょう。」
こうして班超一行は滞在することになった。最初の数日間は、鄯善王も彼らを歓待していたが、すぐに班超は国王の態度が次第に冷たくなっていることに気づいた。国王はしばしば口実を設けて会おうとせず、やっと会えたとしても、共同で匈奴と戦う話題には一切触れないのだ。班超は不吉な予感を抱き、使節団の者たちを集めて分析した。「鄯善王の我々に対する態度がますます不快なものになっている。おそらく匈奴も使者を送り、王を説得しているに違いない。我々は真相を確かめるために、調査しなければならない。」夜、班超は密かに王宮に潜入させたところ、国王が実際に匈奴の使者と酒を飲みながら笑い合っている様子を発見した。どうやら仲良くやっているようだった。この情報をすぐさま班超に報告した。その後の数日間、班超は接待担当者からさらに情報を得て、匈奴は使者を送っただけでなく、武装した従者や護衛100人以上も連れてきていることを知った。彼は状況が極めて深刻な段階に至ったと即座に判断し、直ちに使節団を召集して対策を協議した。
班超は一同に向かって言った。「やはり匈奴は使者を送り、鄯善王を説き伏せたのだ。我々は今、極度の危機に瀕している。もしここで有効な措置を講じなければ、鄯善王が完全に説得された暁には、我々は王と匈奴の同盟の犠牲となるだろう。そうなれば、我々自身の命を守れなくなるのは軽微なことだ。国家から託された使命が果たせなくなるのだ。皆はどうすべきだと思うか?」一同は声を揃えて答えた。「私たちはあなたの命令に従います!」班超は机を力強く叩き、断固とした口調で言った。「虎の穴に入らずんば、虎の子を得ず!今こそ匈奴を殲滅する決意を固めなければ、我々の使命は果たせない!」その夜、班超は人々を率いて匈奴の陣営に突入し、敵の不備を突いて少数で多数を打ち破り、100人以上の匈奴兵をすべて殲滅した。
翌日、班超は匈奴の使者の首を提げて鄯善王に会い、その二枚舌を非難した。「あなたはあまりにも無礼です。我々との同盟を約束しながら、裏では匈奴と接触していたとは!今や匈奴の使者たちは全員我々に殺されました。あとはあなた自身でどうするか決めてください。」鄯善王は驚きと恐怖を感じ、すぐに漢と同盟条約を結んだ。班超のこの行動は西域全体を震撼させ、他の国々も次々と漢と同盟を結び、多くの小国が漢と永久の友好関係を保つことを表明した。こうして班超は使命を完全に果たしたのである。
危機的状況に直面した時こそ、班超のように決断力を発揮し、必要なリスクを冒す勇気を持たなければならない。もし、そのような時にためらったり、後退したりすれば、その結果は思いもよらない悲劇を招くことになるだろう。